奈良県十津川村には、長さ297m、高さ54mの巨大なつり橋があります。

「谷瀬(たにぜ)のつり橋」です。

 

この上を歩くとギシッ、ギシッ、ミシッ、ミシッと音がして、ユラ~リユラリと橋が上下に揺れます。

 

平日の昼前とあって観光客はそれほど多くなかったのですが、それでも何人かが同時に橋の上を歩くと揺れが不規則になり気持ち悪くなります。

 

高所恐怖症ではない私でさえ慎重な足運びにならざるを得ないこのつり橋で、反対側から観光客とおぼしき60代くらいの男性グループがやってきました。

 

その中の1人が、あろうことか大股を開いてわざと橋を揺らしながら楽しそうに近付いてくるのです。他のお客さんが真剣に怖がっていてお気の毒でした。

 

なんでそんなことをするのでしょうね。

 

 

実は十津川村にはもう一つスリリングな「交通インフラ」があります。それが人力ロープウェイ、「野猿(やえん)」です。

 

 

川の上にワイヤーロープが張られていて、そのロープに吊り下げられた「やかた」に乗って、自力で引き綱をたぐり寄せて進むのです。

 

平日の夕方とあって観光客はそれほど多くなく、というか地元の通行人すら見かけず、順番待ちもせずに乗れるのですが(無料)、

ちゃんと対岸まで到達できるのか、戻って来られるのかが不安でなかなか乗り込むことができません。

さらに、山奥でおじさん1人がこの不思議な乗り物に乗ってニヤニヤしている光景を想像すると気恥ずかしくなり、足が前に進みません。

谷瀬のつり橋と比べるとかなり低空の移動ではありますが、下の河川敷には石がゴロゴロ。落下して打ち所が悪ければ命の危険もあります。誰も通らなさそうなので発見されるのに時間がかかりそうだし。

 

川の水はきれいだけど冷たそうだし。

 

「やかた」を吊るすロープ・・・。

大丈夫だとは思うけど・・・。

 

行政にも見放されたような気になり、ますます乗る気が・・・。

 

でも、どうせ誰も見ていないなら、逆に恥ずかしくありません。翌日には筋肉痛になるかもしれませんが、まあ戻って来られない距離でもないでしょう。

意を決して「やかた」に乗り込みます。「初・野猿」です。

 

手繰った分だけ、少しずつ少しずつ進みます。中央付近まではロープが緩やかな下りになっているのでわりと楽に進みます。

 

しかし、半分を過ぎるときつくなってきます。ロープが上りになるのでかなり強く引っ張らないといけないのです。

ようやく到着しましたが、落ち葉に埋もれた足場があるだけ。ここで降りてどこかに行くことも出来ません。

つまりこの「野猿」は、乗ったら最後、どれだけ腕が疲れても必ず自力で戻ることが義務付けられているのです。

 

帰り道の後半以降はさらに厳しさを増します。歯を食いしばってロープを引き寄せますが、進むのはほんのわずか。汗が吹き出します。

 

宙ぶらりんの状態で少し休憩していたら、目指しているスタート地点に軽トラが停まり、60代くらいの男性が2人降りてきました。

2人の話し声は聞き取れない距離でしたが、1人の男性がロープを引っ張り始めたのです。つまり、私が帰るのを助けてくれたのです。楽チン楽チン♪♪♪

私もロープを手繰る作業を再開し、何とかスタート地点に帰還することが出来たのです。聞くと、1人は地元の方、もう1人はその知人で初めて「野猿」を見る方。

私が帰れなくなって困っているのかと思い、助けてくれたようなのです。ありがとうございました。

 

 

意地悪なおじさんと親切なおじさんに出会った「十津川の低空散歩」でした。